広告の不正クリックらしきアクセスを見つけたときの話

以前働いていた広告代理店での話です.その会社と契約しているクライアント「A社のGoogle Analyticsのデータを見ていて,他社が運用しているDSP(これを「広告B」と呼ぶことにします)におかしなアクセスがあることに気づきました.

A社の業務内容(サイトの集客目的)は,ECサイとは違い,一度CVしてしまうと基本同じ内容でCVすることはありません.ただし,内容的には長期検討することはあり得ます.

A社はGoogle Analyticsをカスタマイズしており,クライアントIDやアクセス時間などのデータをカスタムディメンション機能で取得しています(この件はちょっと古い話で,Google Analyticsのユーザーエクスプローラーの機能がまだなく,クライアントIDなどを軸としたデータはカスタマイズしないと見られない環境でした).

このA社のデータを見ると,流入元がある特定の広告B(広告に付けられている手動タグの「参照元 / メディア」の情報から判断)で,一ヶ月の間に3桁のセッションが記録されているユーザーが数十名もいました.クライアントの内容的に,このような頻繁にアクセスされる内容でありません.

ある3桁のセッションが記録されているクライアントIDを指定して詳しいデータを見ると,一見アクセスはランダムに見えます.しかし,前のアクセスから次のアクセスは常に30分以上時間が空くようなアクセスとなっており,昼夜関係なく一日中アクセスしています.ほとんどが直帰するようなアクセスなのですが,たまにサイト内を数ページ移動します.ですが,その閲覧内容はどうみてもおかしい(例えばアクセスしている地域は関東なのに,そのサイトの関西居住者用のページを閲覧するなど).これは,この広告媒体の流入でデータを集計したとき,平均閲覧時間がゼロや平均ページビュー数が1や直帰率が100%にならないようにするためのダミーにしか見えません.

また,Google Analyticsの「参照元 / メディア」の情報は,ブックマークからのアクセスだとCookieの情報が更新されない限り同じになるので,最初に広告から流入し,そのごはブックマークによるアクセスということもあり得ますが,このアクセスは明らかに違っている動きが観測されていました.それは,異常にセッション数が多いクライアントIDのアクセスではたまに問題の広告Bとは異なるDSPの広告からの流入に変わる(「参照元 / メディア」の情報が変わる)ことがありますが,次の流入ではまた問題の広告Bからの流入に変わるという動きをしているのです(途中でCookieの情報が上書きされているので,ブックマークからのアクセスではありません).つまり,アクセスのたびに広告をクリックしているのです.

以上のようなことから,このA社の広告Bは明らかに人によるアクセスではなく何かしらのツールを使って不正クリックされていると判断しました(以上のようなことからこの広告Bは配信元が不正行為をしていると私は思っています).

A社の業務内容的に同一ユーザー(クライアントID)が,一ヶ月でセッション数が「20」以上はほぼないと考え集計したところ,この広告Bからの流入(1万以上のセッション)の約8割がツールを使った不正クリックによる流入ではないかと推測しました.また,クライアントIDと「参照元 / メディア」を軸にセッション数が多い順に並べると,上位はこの問題の広告Bからの流入で埋め尽くされました.

もちろんこのことをクライアントに伝えましたが,我々がお付き合いしていた部門と違う部門が担当している広告媒体のためか非常に対応が鈍く感じました.