人工知能とデジタルマーケティング

2016年のバズワードは人工知能(AI)でした.ただ人工知能という言葉のイメージばかり先行している状況だったとも思います.そもそも今日話題になっている人工知能は,SF映画に出てくるような人間に取って代わり社会を制御や管理できるような代物ではなく,人間の手助け程度(「手助け程度」とはいいますが使い方によってはもちろん人間ではできないようなことをしてくれます)のものです.

<この記事は「デジマのあれこれ」にて2017年1月頃公開された記事を移植したものです>

 

ではなぜ人工知能がこうも話題になったのかというと,Googleの開発したAIが囲碁のプロに打ち勝ったニュースが大きな要因の一つでした.このとき用いられたディープランニング(深層学習)と呼ばれる技術に革新的な進歩があったのです.ディープランニングとは,今日話題になっている人工知能と呼ばれひとまとまりにされている技術の中の一つでしかありません.そして,この技術がいまのマーケティングにおいて活用できるかというと非常に微妙で,活用できないと言った方がよいでしょう.

また,人工知能が流行ったもう一つの理由に,その前にバズワードとなった「ビックデータ」の存在もあります.これによりデータの価値が再認識され,そのようなデータ収集や整理が実際に始まりました(データがこれまでよりも遙かに簡単に大領に取得できるようになったのです).その結果,集まったデータを生かすには次はどうするか?という段階になったのです.つまり膨大なデータが集まったのは良いが,活用できる人材はそうそういなし,そもそも人が判断できる容量を超えている状況に直面したというのが現実だと思います.そうなると,もうコンピュータに頼るしかありません.そこで次は「人工知能だ」となった流れもあったと思います.

上記したように今日話題となっている人工知能とは,人間の手助けをしてくれる程度のものです.したがって,データがあればあとは勝手に判断して最適化してくるというものでは当然ありません.そもそもデータが無ければなにも始まらないのですが,データであればどのようなものでも良いとはなりません.実際に活用できるものもまだまだ限られているのが現状だと思います.そして,マーケティングに活用できる技術は結構前からすでに使われていて,なにも去年に新しく登場したわけではありません.例えば,アマゾンのお薦めで表示されるシステムも今日話題となっている人工知能とまとめられている技術の一つです.

マーケティングにおいて人工知能と呼ばれる技術が活用できる場所はまだ限られています.一方で,人工知能という言葉が流行ったために,前からあった技術を「人工知能」と言い換えてサービスを展開しているところも見受けられます.商売をする方としてははやりの言葉使ったほうがいろいろと便利な面があるのは確かだと思います.ですが,そのような節操ないところとは個人的には取引はあまりしたくないですね(すくなくとも色眼鏡で見てしまいます).